〜腰痛の治し方〜

筋肉ドクター  小島 央

目次

私の腰痛体験
腰痛の現状
腰痛の一般論
腰痛の統計的事実(エビデンス)
腰痛の概念
腰痛の治療

 

マークは一つ上の項目に戻ります。

 




私の腰痛体験

ここでまず最初に、参考に私の体験談をお話しましょう。

それは2001年8月20日のことでした。
滋賀県の新しい病院になんとか慣れ始めた頃に、その辺りではちょっと有名な「鍛錬」というジムで、脚のトレーニングのドンキーカーフレイズ (ふくらはぎの筋肉を鍛える運動)を、そこのオリジナルマシンを使ってやっている時でした。この時は腰ベルトを使用してやっていました。
フルスタック(最高重量)の240sでやろうとしたとき、マシンが重さに耐えられなかったのか、ガタガタ引っかかりながら動き、それが気になって後を振り返った瞬間でした。ドーンと突然腰部より激痛が起こりました。あまりの痛みに失神しそうになりながら、ここで倒れたら自分は医者なのに恥ずかしいな、などと思いながら平静を装い、ゆっくりベンチに横たわりショック状態が治まるのを待ちました。数分横になって立ちあがろうとしましたが、顔が蒼白でまだ立ちあがると失神しそうな感じがあり、10分くらいは横になっていたでしょうか?なんとか、動けるくらいにはなり、マシンを片付け、車に何とか乗り込み、運転して家へ帰りました。

その夜は寝返りもうてないほどの激痛で、地獄でした。あまり眠れず、朝になり何とか起き上がり、このままでは仕事に行けなさそうないと思い、朝風呂に入って温まるといくらか楽になりました。出勤し簡単なコルセットをもらっ てみたのですが全く有効性がなく、その日で着けるのを止めてしまい、鎮痛剤の試供品を2種類一度に飲んでみたのですが、逆に腹が痛くなりしかも腰痛は治らず 、腹は痛いわ腰は痛いわの二重苦を味わいました。もちろん、その後は二度と鎮痛剤は飲みませんでした。

その頃よりKIS原則によるライフスタイルが自分の免疫を高め自然に治ると信じていた私は、とりあえずその日から出来るだけ健康的な生活に努めました。
腰なので有効性はないかと思いましたが、変形性関節症にある程度有効性があると当時言われていたグルコサミンのサプリメントをその頃摂っていた総合ビタミンミネラルに加えて摂ってみることにしました (今なら摂らないと思います。お金の無駄かも。)。


それから心の健康のためにも毎朝目覚まし代わりにワイル博士のCDブックを聞くようにし、治癒力を信じる自己暗示にもとりかかりました。
今なら腰痛の自己暗示には、腰痛ガイドブックという良い本(CD)があるので、こちらを使っても良いと思いますね。
TMSジャパンという腰痛の根拠のある情報を広める活動をされている長谷川淳史さんの著書で、攻殻機動隊の少佐・草薙素子の声優さんがCDでは語りかけてくれます。

あと、みなさん驚かれるようですが、トレーニングも出来るだけ使える限界重量で続けました。さすがに腰を痛めたマシンは二度と使いませんでしたけどね。

ところが、9月1日頃より右下肢のしびれが出現し、しかも右の前脛骨筋が動かなくなってきました。かかとで歩こうとすると右足の足先が上がらないのです。神経走行的に右第5腰神経の障害だと思いました。それでもへこたれずに大丈夫と思っていたのですが、周りがあまりにも心配してくるので、9月11日腰椎のMRIを撮ってみました。
すると、見事に大きな第4/5腰椎間に椎間板ヘルニアが右寄りに出ていました。自己診断どおりだとは思ったのですが、僕のそのときの考えでは椎間板ヘルニアは病気じゃないと何となく思っていましたし、それほど心配していませんでした。
ところがそれを見た部長は、「これは、手術せな治らん形のヘルニアやな」とか言ってきましたが、そんな呪いにはかかるかと、ちょっと不安になりながらも無視しときました。

そんなこんなで様子を見ているとどんどん症状は良くなっていきました。
10月8日には右脚の症状もほとんど治り、そして3ヵ月たったのでそろそろMRIもう一度撮ってみようかななんて思い、11月26日再び撮影しました。 すると、前回見られたヘルニアは消失していました。
その画像を見た部長は「な、ヘルニアは消えるって言ったやろ」なんて調子の良いこと言ってましたけどね。ちょっと、へこまされただけにちょいむかつきましたけどね。
でも、「絶対にすっきり治ることはないけどな」などとまた呪いをかけようとしてましたけどね。

その後、スノボした時とかスクワットした時や何もしてないちょっとした時でも時々痛くなりましたが、今や全快ぶりぶりで、ヘルニアになった当時より強くなっています。

そんな感じで、医者が手術せな治らんなんて言ったって治ることもありますし、しかも腫瘍並といわれた僕のヘルニアも自己治癒力、免疫さえ高めればたったの3ヵ月で消えてしまうということですね。ヘルニアの自然消失は よく知られた事実ですが、僕の友達が調べたところによりますと確認された自然消失の最短記録だったらしく、症例報告の医学論文に私を書いています。

 

Orthopedics. 2009 Nov;32(11):852. doi: 10.3928/01477447-20090922-21.

Spontaneous disappearance of lumbar disk herniation within 3 months.

Nozawa S, Nozawa A, Kojima H, Shimizu K.

Source

Department of Orthopedic Surgery, Gifu Municipal Hospital, Gifu, Japan. noza@tim.hi-ho.ne.jp

Abstract

Although spontaneous regression of disk herniation is a well-known phenomenon, the time taken for the condition to resolve has not been detailed in previous studies. This article describes a case of vanishing lumbar disk herniation in a 33-year-old man. The patient experienced sudden severe lumbar pain while lifting a 240-kg weight while attempting a Donkey Calf Raise during muscle training. The pain persisted despite the use of a lumbar corset and nonsteroidal anti-inflammatory drugs. Twelve days after onset, sensory disturbance appeared in the right L5 dermatome, and a manual muscle test of the right anterior tibial muscle revealed level 3. The pain gradually spread over the right lower extremity and the indistinct lumbago changed to localized back pain at the L4/5 vertebral level. Magnetic resonance imaging (MRI) of the lumbar spine 12 days after onset revealed a large disk herniation at L4/5. T2-weighted images demonstrated the herniated disk with a sequestrated disk fragment, which compressed the right L5 nerve root. Over the following month, his pain gradually diminished and he was able to resume his muscle-building program. Follow-up MRI 3 months after the lumbar injury showed complete disappearance of the extruded disk material. This is the first reported case of disk herniation that disappeared within only 3 months, as previous reports have reported that a minimum 30-week period was needed. Clinical awareness of the possibility that disk herniation may resolve within a relatively short time may aid both correct informed consent and treatment.

PMID: 
19902881 
[PubMed - indexed for MEDLINE]

 

どうやら、それまでの記録が30週で消失が最短だったようですが、私の3ヶ月、つまり12週が記録更新したようです。流石、超健康道パワー。

外来で腰痛の患者さんを診る時などに、出来る範囲で動いて下さい、治るので大丈夫ですよなんて言うと、時々「先生はこの痛さが分からんからや」などと言われます。いや、実は十分に知っています。しかも、状況を見るとあなたよりも痛かったかもしれません。などと思ったりすることも 多々ありますが、克服者としてのアドバイスでもあるということに気付かない方も多くおられます。まあ、腰痛はそれくらい痛いものです。
私も、一番痛い頃は、脚を引きずりながら歩きましたが、仕事は休まず何とか手術や外来もやっていました。腰痛は動こうと思えば痛みの割に意外と動けるもんなんですよね。

では、腰痛の治し方について考えてみましょう。

腰痛の現状

腰痛について我が国の現状では厚生労働省の発表によりますと、有訴者率(何か症状を訴える人)が男性で最も高いのが腰痛、次いで肩こりで、女性で最も高いのが肩こり、次に腰痛、あわせて一番有訴者率が高いのが腰痛とのことです。

このことから単純に言えることは、腰痛、肩こり患者が我が国で最も多いということです。もし、医療従事者になるなら、世界で年に1人しかないような病気を対象にするよりも、腰痛や肩こりなど有訴者の多いものを対象にした方が商売になり易いということです。確かに、本屋に並ぶ本などでも腰痛や肩こりについてのものが多いですし、パラメディカルやマッサージ屋さん、治療機器など、多業種にわたりこの腰痛や肩こりを相手に商売しています。

では、これだけ多くの人が困っていて多くの情報がある腰痛ですが、年々患者さんが増える傾向にあります。これは厚生省の頃から統計を取り出して以来、ずっと増加傾向だそうです。

このことから言えることは、治療がうまく行っていないと言えます。うまく行っているなら徐々に減ってくるはずです。ですから、上記のように腰痛に対する情報や商品が多々存在するわけですが、どれもこれもうまく いっているとは思われないということです。
また、治療だけではなく、腰痛に関する考え方そのものが間違っている可能性もあります。腰痛について原因などが解明されているなら、うまい治療ができそうです。そうすれば、腰痛患者さんは減ってくるはずです。

また、腰痛と言いますと、身体の姿勢やバランス、重いものをもつ運動などが悪いように言われています。しかし、我々日本人は高度経済成長からどんどん悪いバランスの運動や重労働が増えているのでしょうか?どうも、この患者数が増え続けていることから、そういった重労働や悪い姿勢を強いられることが腰痛を減らすようには思えません し、統計的にも姿勢と腰痛に相関は見い出されないのです。

更に、腰痛や肩こりになると、マッサージなどを受けると治るように思っている方が多いと思いますが、昔の人は現代人よりも多くマッサージを受ける機会があったのでしょうか?最近はマッサージ店が花ざかりで、手揉みやらなんやら、多くのマッサージ店、整体院などが軒を連 らねています。
このことから、マッサージなどが治療に良い結果を及ぼしているとは思えません。

私は外来などでよく言うのですが、栄養不足の方に美味しいものを食べさしても解決しませんよね。同様に運動器の不具合の方に身体が気持ち良いことをしたからって治るとは限らないという話をさせて頂いてます。これで納得して頂く方も多くおられますがいかがでしょうか?

腰痛の一般論

では、腰痛の一般論についてお話しましょう。まあ一般論ですから、お話しなくても皆さんご存知かもしれませんが。

まず、姿勢や身体の動きが原因の年寄り病と言われていますよね。お年寄りが腰が痛いと言いますと、「歳やからしゃあないね(関西弁)。」といった声をよく聞きます。また、私の身体は歪んでいるから仕方が無いといった話もよく聞かれます。

次に身体の動作や使い過ぎが原因であると思われていますよね。肉体労働の人が腰痛になりやすいように思っている方が多いのではないでしょうか?腰痛検診なども肉体労働者などに特に行なわれているようです。これは、先ほど腰痛の現状で述べたとおり、疑わしいことが分かります。

そして、それによる骨、椎間板の歪みが病院へ行けば画像検査で分かるというものです。通常の単純X線だけではなく、脊髄造影をしたり、CTを撮ったり、MRIを撮ったりと様々な画像検査が行なわれます。そして、その背骨や椎間板の歪みが神経を圧迫すると痛みになるというものです。

この理屈は当然のように様々な場所で言われています。しかし、神経というのは有線で信号を送るのようなものです。インターネットでもサーバーからの情報が端末のパソコンに何かの線で送られて双方向に通信出来るわけですよね。この線が途中で断線して いるのに情報が送られてくることはありません。
要するに痛いという情報は痛みの受容器部分で情報に置き換えられて、それが神経を通って脳に伝えられ、そして脳が痛いと感じるというメカニズムが考えられます。要するに神経がやられると、感覚の喪失や運動麻痺が起こるのが症状であり、別の情報が分かる痛み 、しびれが分かるというのは理屈がおかしいわけです。

昔、私が学生の時に行ったカイロプラクティック団体の方が、痛みというのは通常、時間が経てば治るか麻痺するもんだとおっしゃっていました。ある意味正しいのではないかと思います。慢性の痛みというのは他の治らなくする要因があるという考えです。現在、私もそういった考え方でいます。

そして 鎮痛剤、筋弛緩薬、胃薬、湿布が有効というものです。腰痛になると薬を飲んだり貼ったりしなければ治らないとまで思っている方がおられます。 しかし、実際のところ、鎮痛剤は字の如く痛みを抑えるだけのもので、湿布もそれを経皮吸収させるだけのものですし、筋弛緩薬は短期的に多少の鎮痛効果があると言われているだけのものですし、胃薬は鎮痛剤の副作用である胃潰瘍を予防(本当は予防できてないらしいですが)という意味合いで処方されています。
要するに全て痛みという症状をマスクして分からなくしているだけで、治るようなものは全く含まれていません。ですので、これらの処方で治ったということは、自己治癒力、免疫力で治ったと言えます。

次に、リハビリでマッサージ、牽引、電気、温熱が有効だというものです。 これも先ほど述べたように、有効性には疑問があります。どちらかと言えば商売に属するもので、治るようにするものではありません。何もマッサージ屋さんに限ったことではなくて、病院でもまるで治療のように平気で行なわれているのがマッサージ、物理療法です。

そして、 ブロック注射は更に腰痛に有効だと思っている方も多々おられます。 診察室へ入ってくるなり、「痛い、注射して」と言ってくる盲信を超えて信仰にまでなっているような方もおられます。このブロック注射の内容はほぼ鎮痛剤(強力な消炎鎮痛作用があるということでステロイドを入れる医師も多くおられます)、麻酔薬、何故かビタミンB12などが入れられていることが多いです。これらも腰痛 が治るのを加速するようなものはありませんし、症状を緩和する目的以外のものではありません。

そして、どうしても ダメな場合は手術で椎間板や骨の歪みを矯正すれば治るというものです。 しかし、この手術ですが、やってもやらなくても5年程度経過すれば結果は変わらないという論文があったりとか、初回の手術成績は良いのですが、2回目、3回目になると効果が低くなるということも言われています。MOB(Multiple Operated Back)という用語まで登場するほど多数回の腰の手術は良くないことが知られています。

また、よく言われる話ですが、腰痛は直立二足歩行の宿命というものがあります。腰にかかる負荷を体重の何倍とか調べて、腰に対するメカニカルストレスが腰痛を起こすという論拠です。

また、併せてよく言われる話ですが、人間は直立二足歩行をするようになって脳が発達したというものもあります。

これは、霊長類、類人猿を研究されている方には明らかに間違っているそうです。要するに直立二足歩行することによって背骨が立つことによって大きな頭を支えることが出来るようになったという論理です。 しかし、霊長類、類人猿はほぼ樹上生活をしており、四足動物が直立歩行を始めたわけではなく、四手動物が草原に降りて直立二足歩行を始めたというのが正しい考えのようです。ですので、霊長類は基本的に四手を使った樹上生活なので、基本的に背骨は立っており、その上に頭があるものだそうです。
よって、この直立二足歩行によって、脳が発達して知性を手に入れたとは全く考えられていないそうです。

では、直立二足歩行が腰に悪いかという話に戻ります。
先ほどの知能の話もそうですが、実は、人類より古くから直立二足歩行をしている動物が存在するのです。
それは何かと言いますと、ペンギンなんです。
ペンギン類が発生したのは、1億4千万年前〜6千万年前、現ペンギンの発生は4680万年前と考えられており、すでに直立二足歩行をしていたそうです。 化石が出るほど昔からペンギンは直立二足歩行をしているそうです。
また、 最初の直立二足歩行をした霊長類があらわれたのは、たかだか400万年前だそうです。

このことから、ペンギンが鳥の中でとりわけ知能が高く、しかも腰が痛そうなら、直立二足歩行が知能を高め、腰痛を増やすと考えられます。しかし、ペンギンが鳥類で飛び抜けて知能が高いとは聞きませんし、ペンギンが腰が痛そうなどとは考えられません。可愛い歩き方をしますが、痛そうでは無いですよね。

腰痛の統計的事実(エビデンス)

医学界では1990年頃からインターネットの発達とともに、医学論文など膨大な情報の検索が容易になったことから、EBM(Evidence Based Medicine)という考え方がされるようになりました。それまでの徒弟制度で偉い先生やその著書から学ぶ医療ではなく、統計的根拠から診断、検査法、治療法を選択しましょうという話です。

で、それによって考え方が大きく変わった代表が腰痛でしょう。統計を取るにはまず、症例数が多くないと調べられません。初めて罹った奇病についてどういった治療が有効かなんて、同じ人で何回か試すしかありませんが、腰痛患者さんは何と言っても一番多いわけですから、様々な方法で研究ができます。

そして、今まで通説で正しいと思われていたことが実は間違っていたことが次々に明らかになりました。

話は脱線しますが、逆に統計エビデンスではなく、要素還元論、分析主義が功を奏したのは創傷治療の話だと私は思っています。これは、単純なメカニズムで正しく説明できる内容だったからでしょう。創傷治癒自体の要素還元論的なメカニズムは複雑ですが、治るのは細胞分裂で治り、ばい菌による感染は感染源が問題だというメカニズムだけでより治る治療が考えられたということです。それにより乾燥と消毒は不要という結論になります。
これは夏井睦先生の新しい創傷治療というホームページに膨大な資料と共に詳しく記載されていますので、ご興味のある方はご覧下さい。

双方に言えることはKIS原則だということだと思います。

では、まず、腰痛が年寄り病かどうかという話をしてみましょう。結果から言えば、年寄り病ではありません。30代から40代に腰痛患者数のピークはあります。しかし、何故これほど年寄り病と言われているのでしょうか?これはやはり、受診率と関係するのでは無いかと私は思っています。どうしても外来診療などしていますと、30代や40代で来られる方は酷い腰痛の方が多いです。要するに軽い腰痛なら働き盛りの方は医療機関を受診しないと思われます。すると、医療従事者は腰痛で来るのは高齢者が多いので、年寄り病という認識になったのでしょう。こういう統計データがあっても尚、年寄り病だという認識を否定しない頑固な自己経験主義者のお医者さんも多くおられます。「私の経験では、腰痛は高齢者に多いです。」ってことですね。

では、背骨や椎間板の変性、変形についてはどういった傾向があるのでしょうか?
熱心にテレビを見たり、本を読んで勉強されている方々はこういった変性、変形は癌が出来たように悪いことが身体の中で起こっていると思っておられるでしょう。
しかし、統計的事実としては、脊椎や椎間板が変性、変形するのは、一番遺伝の影響を受けるもので、加齢と共に増えていくだけということが分かっています。決して力仕事をすれば変性や変形が強くなったりするものでは無いようです。逆に力学的負荷がかかった方が変性、変形が起こりにくいという統計を出している論文もあるくらいです。

この、腰痛は30代、40代をピークに患者数は減っていくこと、脊椎、椎間板の変性は年令とともに増えていくことから考えると、30代、40代以降では、脊椎、椎間板の変性、変形が増えていくと、痛みのある人が減っていくという傾向があるわけです。要するに背骨や椎間板が歪んだりすると痛みが出るという傾向は無いということです。

ロコモティブシンドロームを主張する偉い先生が、こういった訴えのない変性、変形を潜在患者などと整形外科医を対象にしたセミナーで未だに言ったりしています。

次に姿勢や身体の動きが腰痛に関連するかという問題ですが、姿勢に関しては腰痛を発症する人は姿勢が悪いという統計データは全くありません。また身体の動かし方が腰痛を引き起こすというデータも無く、逆に腰痛になった時に安静にするのが治癒を遅らせると言われています。身体の動きを考えるよりも、とりあえず動いておくというのが腰痛には重要という統計的事実なのです。

また、職業による腰痛の発症率に有意差は無いそうで、特に腰痛を起こしやすい職業は無いということです。それにも関わらず、重量物取扱作業、障害児(者)施設等における介護作業、腰部に過度の負担のかかる立ち作業、同腰掛け作業、同座作業、長時間の車両運転などに従事する労働者(基発第547号)を対象に腰痛健診を義務付けています。

結局、腰痛に関して強い統計的関連性を示すのは、心理社会的危険因子と言って、俗に言うストレスが問題だということです。それにも関わらず、腰痛健診をして、腰痛を起こす危険な仕事をしているというストレスを肉体労働者に与えているのです。

では、統計的事実から腰痛とはどういうものかと言いますと、構造的な異常では無い機能的な障害であるということです。どれだけ構造的な異常を探しても今のところ構造的解剖学的異常は見つかっていないということです。無茶苦茶痛くても何も構造は壊れていない、動いても大丈夫な状態だということです。

腰痛の概念

腰痛の概念についてですが、まず、通常の腰痛でない腰痛を除外しなければなりません。なにも腰が痛いのは全て同じ病気であるとは限りません。先ほどまで述べてきたようにもちろん、骨や関節の変形は通常の非特異的な腰痛と捉えて全く問題ないと思われますが、そうでない腰痛について述べたいと思います。

それは、世界のガイドラインではレッドフラッグと呼ばれているそうですが、これは何かと言いますと、まず、本当の外傷である骨折、脱臼などによるもの(骨粗鬆症などによる病的骨折)、(悪性)腫瘍(どこかの癌が転移してきたものの可能性もあります)、感染による炎症、その他内臓疾患の関連痛(内臓が悪いのに腰痛に感じるもの)などがあります。これらは通常の非特異的腰痛として対処してはいけないので、これらの可能性があるときは病院へ行かなければなりません。

それでは具体的にどういう症状がそういったものか見て行きましょう。もちろん、これらの症状があったら全て危ない腰痛というわけでもありませんのでその辺りを勘違いしないようにして下さい。こういったことがいくつかあれば、放置しないで病院で調べた方が良いかもしれないということです。

まず、発症年齢が20歳未満か55歳超であること。これは20歳未満は化膿性脊椎炎など感染による腰痛があることもあるからです。 また、若年者では新鮮な治癒可能な腰椎椎弓骨折、つまり腰椎分離症であることもあります。そして、55歳以上は悪性腫瘍の転移や骨粗鬆症などによる病的骨折の危険性も高まります。
次に、最近の激しい外傷歴(高所からの転落、交通事故など)、 身体の変形。これらは先ほどの分離症を含む骨折脱臼などが疑われます。
次に、進行性の絶え間ない痛み(夜間痛、楽な姿勢がない、動作と無関係)があるということ。これも悪性腫瘍や感染などが疑われます。
胸部痛があること。これは解離性大動脈瘤や狭心症など心臓の疾患からの関連痛であることもあります。
そして、悪性腫瘍の病歴、 全般的な体調不良、 原因不明の体重減少。これらは脊椎悪性腫瘍の可能性があるということです。
そして、 長期間にわたる副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)の使用歴。何かと様々な慢性疾患に使われるステロイドですが、免疫をおとし感染しやすくなったり、骨が弱くなり骨折しやすくなったりします。
そして、 非合法薬物の静脈注射、免疫抑制剤の使用、HIVポジティブです。これは易感染性により化膿性脊椎椎間板炎などの危険性が高いということです。
腰部の強い屈曲制限の持続、 発熱。これらも化膿性のものによる腰痛が疑われます。
脊椎叩打痛 。これは感染や外傷による腰痛ではみられます。多くの非特異的腰痛の方は叩くと気持ちいいと言ったりします。でも、私の診た患者さんのおばあさんで叩いて気持ちいいと言ってたのに、解離性大動脈瘤だったということもありました。
そして、 膀胱直腸障害とサドル麻痺と言われる排尿排便障害、持続性の陰茎の勃起、陰部の異常感覚などは馬尾症候群という疾患が疑 われ、非特異的腰痛では無く、緊急手術の適応となります。

で、そういったものではない非特異的な 腰痛は自己限定性疾患、要するにほっといたら勝手に治る病気だということです。慢性化している方は治さない因子が別にある可能性が高いということです。無茶苦茶痛くて歩けなくても、出来る範囲で動いているといつの間にか治ってしまうものだということです。

そして、腰痛は現代病であるということです。未開の地で生活している人々には、非特異的腰痛は存在しないそうです。
これは、以前NHKの番組でやっていましたが、本当のようです。腰痛になったことのある人は全員木から落ちたとかハイエネルギー外傷的な腰痛でした。
また、江戸時代の健康法を書いた貝原益軒の養生訓にも、患者数が膨大なら絶対触れそうな腰痛、肩こりの話題には一切言及していません。このことから、その昔には、腰痛、肩こり患者などほとんどいなかったのではないかと思われます。

では現代人とそうでない人が何が違うかと考えますと、 要するに上記の腰痛の一般論を盲目的に信じている人が腰痛になっているということなんですね。心理社会的因子なんて言うと、難しい心の闇でもあるのかと思う方がおられますが、ただ、腰痛に関しての認識の間違いが腰痛を引き起こすということなのです。

腰痛の治療

では、実際腰痛の治療はどういったものが有効性が高いのか見て行きましょう。

まず、整形外科のリハビリ、鍼灸、柔道整復など様々な医療機関で当然の治療行為として行なわれている牽引、ホットパック、電気等、物理療法は腰痛には無効 だと言われています。

次に、腰痛と言えば コルセット(腰部固定帯)です。スポーツショップのものからマックスベルトなどの既成品、オーダーメイドのダーメンコルセットやフレームコルセットなどがあります。しかし、統計的に 腰部固定帯は治療・予防ともに無効と言われています。 しかし、相撲でもまわしを巻きますし、ウェイトリフティングやパワーリフティングやレジスタンストレーニングなどでは腰ベルトを巻きます。経験的に腰痛の治療予防という意味ではなく、パフォーマンスアップには良いと思いますね。パワーリフティング競技でもベルトなどを使わない 完全ノーギアよりも、ベルトを使うと数s扱える重量が上がったりします。
ですので、腰痛にこだわってコルセットは使うものではなく、パフォーマンスアップやねじり鉢巻のような気合注入などの意味で使われるものと思っている方が健康的な認識かもしれませんね。こんな考え方なんてどうでも良いと思われるかもしれませんが、こういう考え方一つが心の問題になるので、腰痛では特に必要なことだと私は思っています。

次に腰に負担のかかる悪い姿勢や動きを少ない労働環境を作るような 人間工学的アプローチと呼ばれるものも統計的事実としましては無効と言われています。 腰痛を治療、予防する身体の姿勢や使い方は無いということです。逆にどんな動きをしても腰痛になるとは限らないということです。無関係なんです。コルセットと同様に、こういう動きをしたら腰が痛くなるんじゃないかなとか、間違った思い込み、認識を持つことこそが腰痛の原因であり治療を邪魔する因子なんですよね。

そして、先程も言いましたが何度も言いますが、 安静は害ということです。 これは何も腰痛に限ったことではなくて、実は医学的な統計データで安静を支持する論文は一件もないんですよね。どんな時にも絶対に安静にしなければならないという状況は無いというのが統計的事実なんです。ドラマなどでは、絶対安静 ・面会謝絶などと言われると重病の代名詞のように、演出効果のように使われますが、実際は、医療の通説、迷信やその主治医のフィーリングでそう言われているということです。

そして、特に慢性腰痛に関しては 運動習慣は有益だということです。 急性腰痛の時にあえて普段やらないような運動をやることに意味はないということですが、安静にするのではなく出来る範囲で日常生活の活動性を維持することが重要だということですね。だから私なんかは定期的なトレーニングをやるのが日常生活習慣ですから、それを維持しようとすることは、益になっても害にはならな かったということです。

最後に、私の体験談でも話したように、 重症感を持たない、与えられないことが重要です。 仮にあなたが医療従事者ならば、腰痛の人に過剰に心配したり、じっとしといたら?なんて言おうものなら、それが本人は重症感を持ち、あなたの親切心とは裏腹に治さなくしてしまう可能性があるということです。もちろん、あなたが医療従事者で無くても、となりの知人友人が腰痛であった時に、腰痛は治らんでとか、 姿勢が悪いしやとか、安静にしなあかんでとか、余分な適当なアドバイスをしてしまったがために、その人を不幸にしている可能性があるのです。注意しましょう。

私も別に一度なった腰痛の恐怖を完全に克服しているわけではなく、ヘビーなトレーニングしている時など腰に物凄いメカニカルストレスを感じているときなどに、ちょっと不安感に襲われることもあります。そんな時に私が使う克服法を伝授しましょう。

そんな時に私がやって有効性があると感じているのは、「…は関係ない」と自分に言うことです。重たいの持って不安に思ったときは、「重たいのを持つのは腰痛と関係ないんだな。」って自分に言うようにしています。それが事実ですし、良い自己暗示にもなります。すると、なんで不安感なんて持ってんだろうかって思えますから、恐怖心が無くなります。そうこうしているうちに何にも思わなくなってしまいます。そうするようになってからは、それまで多少再発を繰り返していた腰痛ですが、本当に起こさなくなってしまってます。

もしあなたが腰痛に苦しんでおられるなら、これを参考に自分で治してみてはいかがでしょうか?何かに依存すると治りにくくなるという傾向も腰痛にはあるようです。ということで、 通常あなたの持っている力で十分治りますので、それを信じて簡単に治してみて下さいね。